10月, 2013年
- 2013-10-31適用要件が緩和される所得拡大促進税制
- 2013-10-30年末調整についてのチェック事項
- 2013-10-28来月は「下請取引適正化推進月間」です
- 2013-10-25年の中途で扶養親族等に異動があった場合
- 2013-10-2324年度の黒字法人の割合は27.4%
- 2013-10-21大きな被害を受けた地域への国の支援
- 2013-10-17消費税の転嫁拒否等が禁止される事業所は…
- 2013-10-15来年(2014年)施行される主な税制(成立済みのもの)
- 2013-10-15年末調整で必要な証明書等の確認と保存
- 2013-10-13低所得者に対する「簡素な給付措置」
- 2013-10-09消費税率引上げ決定に伴う税制改正大綱
- 2013-10-0724年分の平均給与は408万円
- 2013-10-04違憲判断を受けた相続税額の取扱い
- 2013-10-03労災特別加入の給付基礎日額が拡大
- 2013-10-01Q&Aで見る平成25年度改正相続税②
適用要件が緩和される所得拡大促進税制
◆給与等を増加させた企業の支援措置◆
政府は、経済成長とともに所得の拡大を重要な課題としており、今月1日に公表した「民間投資活性化等のための税制改正大綱」には、今年度(25年4月以後に開始する事業年度)から施行された所得拡大促進税制の拡充・延長が盛り込まれました。
同制度は現行、国内雇用者の給与等支給額について、以下の要件①~③を満たす場合、基準事業年度(通常24年度)より増加した額の10%が税額控除(法人税額の10%、中小は20%が限度)できます。
①給与等支給額が基準事業年度比で5%以上増加
②給与等支給額が基準事業年度以上であること
③平均給与等支給額が前事業年度以上であること
◆支給額の増加割合の緩和など◆
改定案では、要件①の増加割合5%以上を、*27年4月前に開始する適用年度は2%以上、*27年4月~28年3月までは3%以上、*28年4月~30年3月までは5%以上に緩和します。
要件③については、平均給与等支給額の算定対象が「継続雇用者(適用年度とその前年度に給与等を支給された雇用保険一般被保険者)に対する給与等」に見直され、退職者や新入社員、定年後の再雇用者などを除いて判定することになります。また、前年度の平均を「上回る」ことに変更されます。
これらの改正は26年4月以後に終了する事業年度から適用される予定です。なお、3月決算法人の25年度は、26年4月前に終了する事業年度ですが、改正後の要件であれば全て満たしている場合には、26年度で制度を適用した際に25年度分の控除額を上乗せして税額控除ができます
年末調整についてのチェック事項
年末調整の準備年末に向けては毎月の定例事務のほかに冬季賞与の査定・計算・支給事務、年末調整事務などがあり、経理担当者は多忙をきわめます。
特に年末調整事務については、11月から準備を進める必要があります。この時期、税務署や市区町村などで年調事務の説明会が開かれますから、できる限り出席して、事務の要点をチェックしましょう。
税務署から年末調整関係の書類が届くので確認してください。併せて、各種控除申告書などの関係書類を早めに入手し、社員に配付します。
保険料控除証明書などを預かるか大切に保管するか指示します。中途入社の方は、前勤務先の「源泉徴収票」を取りよせるよう依頼します。このとき年末調整に関する注意事項や、控除を受けるために必要な控除証明書などが一覧できる資料を作成し、一緒に配るとよいでしょう。
来月は「下請取引適正化推進月間」です
毎年11月は「下請取引適正化推進月間」です(標語「下請代金 きちっと払って 築こう信用」)。
下請法では親事業者に対して、注文書の交付や、下請代金の支払期日を定めること等を義務付けています。また、通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定めることや、発注時に決定した下請代金を理由もなく発注後に減額する、一方的に発注の取消や変更させること等は、禁止行為として違反になります。
来年4月から消費税率が引上げられますが、転嫁対策措置法により消費税の転嫁を拒む行為等が禁止されていますので、下請法と併せて理解する必要があります。
年の中途で扶養親族等に異動があった場合
年末調整は「扶養控除等(異動)申告書」などに基づいて行います。
年の中途で控除対象扶養親族の数などに異動があった場合は、その都度異動申告を行うことになっていますが、
*控除対象であった扶養親族が就職や結婚などにより対象外となった
*結婚したことで控除対象となる配偶者を有することとなった
*離婚などで寡婦に該当することとなった場合など
異動申告を提出し忘れていることがありますので、確認しましょう。
24年度の黒字法人の割合は27.4%
◆黒字申告割合は2年連続上昇◆
国税庁が公表した「平成24年事務年度 法人等の申告事績」によると、法人税の申告件数は276万1千件で、その申告所得金額は45兆1874億円(前年度比21.2%増)、申告税額は10兆105億円(同5.0%増)となり、3年連続で増加しました。また、復興特別法人税の申告税額は6758億円でした。
申告を行った法人における黒字割合は27.4%(同1.5%増)で、過去最低の25.2%となった22年度から2年連続で上昇しています。なお、黒字申告1件当たりの所得金額は5966万円(同14.5%増)でした。
一方、7割以上を占める赤字法人の申告欠損金額は16兆8226億円(同22.6%減)、1件当たりの欠損金額は840万円(同20.9%減)となり、大幅に減少しています。
◆欠損金が生じた場合の繰越控除・繰戻還付◆
欠損金が生じた場合、中小法人等(資本金1億円以下の法人など)が利用できる制度には、繰越控除制度または繰戻還付制度があります。
繰越控除は、欠損金を翌年度以降9年間にわたり繰り越すことができ、繰越期間中の事業年度で生じた所得金額から控除できます。
なお、繰越控除は中小法人等以外の法人も適用できますが、控除限度額が所得金額の80%に制限されています。
一方、繰戻還付は、前年度に所得があり法人税を納付していた場合に、その所得と相殺することで納付した法人税の還付を受けることができる制度で、中小法人等に限り適用できます。
大きな被害を受けた地域への国の支援
相次ぐ台風により各地で大きな被害が出ています。今週半ばにも27号の接近が予想されていますので、十分ご注意ください。
災害により一定規模(滅失した住家が一定数以上など)の被害を受けた地域には、災害救助法や被災者生活再建支援法などの適用により、被災者の生活や損壊した住宅の救済措置が行われます。
中小企業者に対しては、政府系金融機関による災害復旧貸付や既往債務の返済条件緩和などが実施されます。また、小規模企業共済に加入している場合は、納付済み掛金の範囲内で原則として即日に低利融資を行う災害時貸付も利用できます(災害救助法適用地域内の事業者が対象)。
消費税の転嫁拒否等が禁止される事業所は…
消費税転嫁対策特措法により、特定事業者は26年4月以後に特定供給者(継続取引をしている事業者)から受ける商品・役務について、減額や買いたたきなどの転嫁拒否行為が禁止されます。
特定事業者とは、大規模小売事業者(売上100億円以上など)だけではなく、資本金3億円以下の事業者や個人事業者等と継続的に取引を行っている法人事業者も該当するため、中小企業でも特定事業者となる場合があります。
また、特定供給者は、販売する商品を納入する事業者だけではなく、店舗で使用する什器等や店舗の清掃等を供給する事業者も含まれます。
来年(2014年)施行される主な税制(成立済みのもの)
平成26年4月から消費税率8%への引上げが決定しましたが、今年度改正などにより来年から施行される他の税制も確認しておきましょう。
◎小規模宅地等の特例(相続税評価額の減額)に関する適用要件の緩和【26年1月】…
二世帯住宅は、内部で行き来ができない場合でも適用対象となります。また、老人ホームに入所したことで居住しなくなった家屋の敷地についても要件が緩和されます。
◎上場株式等の軽減税率10%が廃止【26年1月】…
配当や譲渡益に対する税率が20%になります。
◎NISA(少額投資非課税制度)の開始【26年1月】…
年間100万円を上限に購入した上場株式や投信等の配当や譲渡益が5年間非課税となります。
◎国外財産調書の提出【26年1月】…
12月末時点で、5千万円超の国外財産調書を提出する必要があります(今年末の保有状況から対象)。
◎延滞税等の引下げ【26年1月】…
延滞税、利子税、還付加算金が引下げられます。
◎住宅ローン減税の拡充【26年4月】…
一般住宅の場合、10年間の最大控除額が400万円(認定住宅は500万円、被災地は600万円)に拡充されます。なお、収入が一定以下(都道府県民税の所得割額が9.38万円以下)の方は給付金が支給されます。
◎領収書等に係る印紙税の非課税範囲の拡大【26年4月】…
金銭又は有価証券の受取書について、記載金額5万円未満は非課税となります。
◎不動産譲渡及び建設工事請負の契約に係る印紙税の軽減措置の拡充【26年4月】…
軽減措置の対象が不動産譲渡は10万円超、建設工事請負は100万円超に拡大され、軽減割合も引上げられます。
年末調整で必要な証明書等の確認と保存
保険会社等から生命保険や地震保険の「保険料控除証明書」が送られてきます。
給与所得者は12月の年末調整で必要ですから、従業員に対し大切に保管するようにお知らせするか、その都度会社で預るようにします。
また、生計を一にしている親族の社会保険料を支払っている場合も控除が受けられますが、国民年金については支払証明書(領収書)が必要となります。なお、中途入社した方には前勤務先から「源泉徴収票」を取り寄せるように依頼します。
低所得者に対する「簡素な給付措置」
消費税率が8%に引上げられる際、低所得者に対しては暫定的・臨時的な措置として現金を支給する「簡素な給付措置」が実施されます。
この給付措置は、市町村民税(均等割)が課税されてない者(市町村民税が課税されている者の扶養親族等を除く)が対象となり、対象者1人につき1万円を支給するものです。ただし、生活保護制度内で対応される被保護者等は対象外です。
なお、対象者のうち、老年基礎年金(65歳以上)の受給者などには5千円が加算されます。
消費税率引上げ決定に伴う税制改正大綱
政府は、平成26年4月から消費税率を8%へ引き上げることを正式決定するとともに、「民間投資活性化等のための税制改正大綱」を公表しました。
◆税制改正大綱の主な内容は??◆
◎生産性向上設備投資促進税制の創設
…生産性の向上につながる設備を取得等した場合、①産業競争力強化法(秋の臨時国会に提出)の施行日~28年3月までは即時償却又は5%税額控除、②28年4月~29年3月までは50%特別償却又は4%税額控除が選択適用できる制度を創設。
◎中小企業投資促進税制の拡充
…中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、適用期限を3年延長するとともに、上記の生産性向上設備投資促進税制に該当する設備は、即時償却又は10%税額控除に拡充する。また、税額控除の適用について、資本金1億円以下の事業者(現行3千万円以下)も対象とする。
◎所得拡大促進税制の拡充
…給与等支給額を一定額以上増加させた場合の税額控除制度について、適用期限を2年延長するとともに、増加割合の要件(現行5%以上)を、①27年4月前に開始する適用年度は2%以上、②27年4月~28年3月までは3%以上、③28年4月~30年3月までは5%以上とする。
◎研究開発税制の拡充
…上乗せ部分の税額控除(増加型又は高水準型)について、提供期限を3年延長するとともに、増加型の措置を増加率に応じて控除率を引上げる仕組みに改める。
◎復興特別法人税の1年前倒し廃止の検討
…復興財源の確保や、国民の理解、賃金上昇につなげること等を踏まえた上で、12月中には結論を得る。
24年分の平均給与は408万円
「平成24年分民間給与実態統計調査(国税庁)」によると、1年を通じて勤務した給与所得者は4,556万人(男性2,726万人、女性1,829万人)で、その平均給与は408万円(男性502万円、女性268万円、平均年齢44.9歳)でした。
給与階級別分布では、300万円超400万円以下が819万人(18%)で最も多く、次いで200万円超300万円以下が780万人(17.1%)となり、400万円以下が全体の約6割を占めています。
なお、事業所規模別の平均給与をみると、従事員10人未満の事業場では322万円(男性395万円、女性236万円)、10~29人では377万円(男性450万円、女性236万円)となっています。
違憲判断を受けた相続税額の取扱い
◆相続税額の計算の取扱いを変更◆
婚姻関係にない男女間の子(婚外子)の法定相続分を婚姻している夫婦の子の1/2する民法の規定について、今月4日に最高裁が違憲と判断しました。
これを受けて、国税庁は相続税額の計算の取扱いを公表し、25年9月5日以後に申告又は処分により相続税額を確定する場合は、婚外子に関する規定がないものとして相続税額を計算することになります。
なお、25年9月4日以前の申告等により確定している相続税額の是正はできません。また、婚外子に関する規定に基づいて、相続税額の計算を行っていることのみでは、更生の請求事由には当たりません。
◆相続税額の計算方法は◆
相続税の計算は、正味の遺産額(課税対象となる財産から借入金等の負債と葬式費用を差し引いた額)から、基礎控除額(5千万円+1千万円×法定相続人数)を差し引いた課税遺産総額を求めます。この場合、基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。なお、基礎控除額は27年以降、「3千万円+600万円×法定相続人数」に引下げられます。
次に法定相続人が課税遺産総額を法定相続分に応じて取得したものと仮定(実際の遺産分割に関係なく)して、相続税の総額を計算します。
例えば、相続人が妻と子2人で、正味の遺産額が1億円の場合、課税遺産総額2千万円(1億円-8千万円)を法定相続分で按分すると、妻1千万円(1/2)、子500万円(1/4)ずつとなり、それぞれに税率を掛けた税額(1千万円以下は10%)の合計200万円が総額となります。各相続人の税額は、この総額を実際の取得割合で按分した額です。
労災特別加入の給付基礎日額が拡大
労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対して補償を行う制度ですが、労働者に該当しない経営者や役員などは加入できません。しかし、一定の中小企業事業主や、いわゆる一人親方などは任意加入ができる特別加入制度があります。
特別加入の場合は、加入者が選択した給付基礎日額を基に、年間保険料や補償内容が決まります。
給付基礎日額については、これまで3,500円~2万円が選択できましたが、今月から22,000円・24,000円・25,000円が加わりました。
なお、既に特別加入している方が給付基礎日額の変更を希望する場合は、来年度(26年度)から新たな給付基礎日額を選択できます。
Q&Aで見る平成25年度改正相続税②
1.小規模宅地等の特例
Q.相続税の基礎控除が引き下げられた半面、負担軽減策として小規模宅地等の特例の適用範囲が見直されたようですが、その内容を教えてください。
A.(1)適用対象面積の拡充
特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積の上限を拡充し、かつ、特例の対象として選択する宅地等のすべてが、特定事業用宅地等および特定居住用宅地等である場合は、それぞれの適用対象面積まで適用可能となります。
なお、貸付事業用宅地等を選択する場合の適用対象面積の計算は、従来どおりです。
この改正は、平成27年1月1日以後の相続税又は遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
(2)二世帯住宅の取扱い
一棟の建物で構造上区分のあるものについて、被相続人およびその親族が各独立部分に居住していた場合、その親族が相続または遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人およびその親族が居住していた部分に対応する部分は、特例の対象となります。
この改正は、平成26年1月1日以後の相続税又は遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
(3)老人ホームの場合
老人ホームに入所したことにより、被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等が、次の要件が満たされる場合に限り、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして、特例が適用できるようになります。
【改正後の要件】
①被相続人に介護が必要なため入所したものであること
②その家屋が貸付け等の用途に供されてないこと
この改正は、平成26年1月1日以後の相続税又は遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
2.相続時精算課税
Q.相続時精算課税の適用要件と対象者について、どのように改正されましたか。
A.若年世代への資産の早期移転を一層促進する観点から、相続時精算課税の適用要件について、贈与者および受贈者の対象を拡充しています。
この改正は、平成27年1月1日以後の相続税又は遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。