11月, 2019年
- 2019-11-29軽減税率に伴う区分経理の留意点
- 2019-11-27基礎控除引上げに伴う扶養親族等の所得要件
- 2019-11-25太陽光発電の固定価格買取が順次満了
- 2019-11-22年末調整のポイント
- 2019-11-20法人税調査による申告漏れ所得が大幅増
- 2019-11-18来月から運転中の「ながらスマホ」が厳罰化
- 2019-11-15退職金等に対する所得税の取扱い
- 2019-11-13来年から投資信託等の二重課税調整措置
- 2019-11-11募金団体を通じて被災地に寄附した場合
- 2019-11-08キャッシュレス決済手数料の消費税の取扱い
- 2019-11-06台風19号の被災企業に対する追加支援措置
- 2019-11-05★☆★11月のチェックポイント★☆★
- 2019-11-01「下請法」と「消費税転嫁対策特措法」
軽減税率に伴う区分経理の留意点
消費税の軽減税率制度が実施されたことに伴い、原則として税率ごとに区分して帳簿等に記帳することなどが必要となりました。
◎旧税率が適用される取引がある場合・・・・・・
今年9月までの消費税率(旧税率)と軽減税率は同じ8%ですが、国税と地方税の割合が異なり、 旧税率 「国税6.3% 十地方税1.7% 」、 軽減税率 「国税6.24% 十地方税1.76%」のため、区分する必要があります。 |
◎ 「店内飲食」 と 「持ち帰り」の税込価格を統一している場合・・・・・・
標準税率が適用される「店内飲食」と、軽減税率が適用される「持ち帰り」を同一の税込価格で販売している場合でも適用税率が異なるため、販売時点の顧客の意思確認などで判定した適用税率に基づき、区分経理を行う必要があります。
◎誤った税率で計算した税込対価のレシートを交付した場合・・・・・
取引の事実に基づく適正な税率で申告する必要があるため、
例えば、標準税率が適用される商品に誤って軽減税率を適用した税込価格で販売した場合でも、標準税率の売上として記帳します。
◎誤った税率で計算した税込対価のレシートを受領した場合・・・・
消費税の仕入税額控除の適用には、取引の事実に基づく「区分記載請求書等」の保存が必要となるため、再交付を依頼といった対応が必要となります(税込対価の誤りは「追記」不可)。
◎キャッシュレス・消費者還元 (即時充当) に係る消背税の仕入税額倥除・・・・
コンピニ等が行っている即時充当(その場でポイント等相当額を購入金額に充当する方法)を受けた場合、課税仕入れに係る支払対価の額は「商品対価の合計額(ポイント等の充当前)」となります。
基礎控除引上げに伴う扶養親族等の所得要件
令和2年分から個人所得課税の見直しにより、
すべての納税者に対して適用される「基礎控除」を48万円(現行38万円)に引上げる一方、 「給与所得控除」及び「公的年金等控除」は一律10万円引下げとなります(給与所得と年金所得の双方を有する方は、どららか一方の控除のみ減額)。 |
これに伴い、各種所得控除を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件も見直され、
配偶者控除の対象となる配偶者や、扶養控除の対象となる扶養親族の所得要件は48万円以下(現行38万円以下)となります。 また、配偶者特別控除の対象となる配偶者は48万円超133万円以下となり、控除額の区分がそれぞれ10万円引上げられます。 |
太陽光発電の固定価格買取が順次満了
平成21年(2009年)11月に開始された住宅用太陽光発電の余剰電力買取制度は、固定価格での買取期間が10年間のため、今月以降に買取期間が順次満了を迎えることになります。
買取期間が満了した住宅用太陽光発電については、 ①電気自動車や蓄電池等と組み合わせて自家消費、 ②小売電気事業者と個別に契約を結び余剰電力を売電する、 といった選択肢があります。 |
☆ 12月2日(月)は、所得税予定納税第2期分の納付期限。振替納税の方は預貯金残高の確認を。
年末調整のポイント
年末調整の時期が近づいてきました。
◎年末調整の対象者‥‥
原則として「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、年末まで勤務している方が対象
対象外の方 ※給与総額が2千万円を超える方 ※災害減免法により給与に対する源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた方 |
なお、年の中途で入社した方が、前勤務先から給与の支払を受けていた場合、その給与を含めて年末調整をします(前勤務先で交付された源泉徴収票が必要)。
◎配偶者控除等の適用‥‥
配偶者控除又は配偶者特別控除の適用は、本人の合計所得金額が1千万円以下(給与のみの場合は年収1220万円以下)で、生計を一にする配偶者の合計所得が123万円以下(同201万6千円未満)の場合が対象です。
年末調整において適用を受ける場合は「配偶者控除等申告書」の提出が必要となります。
◎扶養控除の適用‥‥
控除対象となるのは、本人と生計を一にする16歳以上の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)で合計所得金額が38万円以下の場合です。
別居している場合でも常に生活費や療養費を送金しているなど、本人と生計を一にしている場合であれば対象になります。
◎扶養控除等の判定‥‥
扶養控除や配偶者控除等は、年末調整を行う時点の現況で判断しますが、親族などが年の途中で亡くなった場合は、その時点において判定します。なお、控除対象者を判定する際の合計所得金額に非課税所得などは含まれません。
◎生命保険料控除の対象‥‥
契約者が本人以外の親族等でも、その生命保険料を支払ったことが明らかであれば、控除の対象とすることができます。
法人税調査による申告漏れ所得が大幅増
国税庁が公表した「平成30事務年度 法人税等の調査実績」によると、
法人税の調査は
実地調査件数は、9万9千件のうち7万4千件に非違があり、
申告漏れ所得金額は前年比38.2%増となる1兆3813億円(1件当たり1397万円)、
追徴税額は1943億円(同196万円)でした。
なお、平均調査日数は11日となっています。
法人消費税は、
実地調査は、9万5千件のうち5万6千件に非違があり、
追徴税額は800億円(同84万円)でした。
実地調査以外にも書面や電話などによる「簡易な接触」が4万3千件実施されており、
法人税・消費税での接触率は4.5%となっています。
来月から運転中の「ながらスマホ」が厳罰化
来月から、運転中の「ながらスマホ」が厳罰化され、
◎携帯電話を保持して通話や画像注視した場合、
※罰則は懲役6ヶ月以下又は罰金10万円以下(現行は5万円以下の罰金)、
※反則金は普通車の場合で1万8千円(同6千円)、
※違反点数は3点(同1点)に引き上げられます。
◎事故などの交通の危険を生じさせた場合
※罰則は懲役1年以下又は罰金30万円以下(同3ヶ月以下又は5万円以下)
※非反則行為となり罰則適用
※違反点数は6点(同2点)で免停となります。
退職金等に対する所得税の取扱い
退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として税負担が軽くなるよう、所得税の取扱いが優遇されていますが、政府税制調査会は中長期の税制のあり方を示す中期答申において、働き方や人生設計の多様化を踏まえ、勤続年数で税負担の差が生じる退職所得課税の見直しを検討課題の一つに挙げています。
♦退職金から控除額を差し引いた1/2に課税
退職金等の支払いを受けた場合
課税対象となる退職所得は【(退職金-退職所得控除額)×1/2】で算出され、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。
退職所得控除額は、勤続年数(1年未満の端数がある場合は1年)に応じた額となり、次の算式で計算します。 ◎勤続年数20年以下の場合‥‥40万円×勤続年数(※80万円未満となる場合は80万円) ◎勤続年数20年超の場合‥‥800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
役員等として勤務した期間が5年以下の方が役員等勤続年数に対応する退職金の支払を受けた場合
【役員退職金-退職所得控除額】が退職所得になります(1/2とする措置はなし)。 |
♦退職所得として扱われるものは
小規模企業共済による共済金(準共済金)や、中小企業退職金共済によって支払われる退職金を一括で受け取る場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受取る場合なども退職所得として扱われる。
上記と同様に退職所得控除額(この場合は勤続年数ではなく契約期間)を差し引いた額の1/2が課税対象となります。
来年から投資信託等の二重課税調整措置
金融機関に開設している口座で保有する公募投資信託等で、外国資産(株式や不動産等)への投資による利益をもとに分配金が支払われている場合、その分配原資となる配分等は投資先の税制に基づき外国所得税額が徴収されており、投資信託等から支払われる分配金についても所得税や住民税が課税される二重課税の状態でした。
この二重課税状態を解消するため、源泉徴収される所得税額から一定の外国所得税額を控除する調整措置が、来年1月以降に支払われる分配金に対して自動的に適用されます。
だたし、住民税には適用されません。またNISA口座で保有している場合も対象外です。
募金団体を通じて被災地に寄附した場合
被災した地方自治体への義援金は、被害を受けた地方自治体に対して直接寄附をした場合に加え、募金団体(日本赤十字等)を経由して地方自治体に寄付をした場合も、「ふるさと納税」として控除が適用されます(2千円を超える部分の金額が所得税を個人住民税から控除)。
ただし、募金団体を通じた義援金等については、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」は適用されないため、控除を受けるためには確定申告が必要になります。
キャッシュレス決済手数料の消費税の取扱い
♦キャッシュレス・消費者還元事業の登録状況
中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元等を支援する「キャッシュレス・消費者還元事業」の開始から一ヶ月が経過しました。
経済産業省によると現在、加盟店の登録申請数は約92万店(10月31日時点)、登録加盟店数は約64万店(11月1日時点)となっています。
本事業の実施期間は来年6月までの9ヶ月間となっており、登録申請は来年4月まで可能です。
なお、本事業の期間中に登録加盟店が決済事業者に支払う決済手数料率は3.25%以下に設定され、さらに手数料の1/3が補助されます。
この決済手数料に係る消費税の取扱いは、クレジットカードや電子マネーなどの決済手段によって異なります。
♦決済手数料に係る消費税の取扱い
クレジットカードの決済手数料については、
・カード会社と直接契約している場合であれば金銭債権の譲渡に該当することから、消費税は非課税となります。
・契約が決済代行事業者の場合における手数料は課税取引となります。
・電子マネーなどの決済手数料は、決済システムの提供の対価として課税取引です。
・決済手数料の1/3補助については、決済事業者が加盟店に対して、
① 一旦全額の手数料を徴収後、手数料の1/3を支払う方法、
② 徴収する手数料から予め1/3を控除する方法により行われますが、これは国庫補助金を財源として補填金であることから、消費税の不課税取引になります。
台風19号の被災企業に対する追加支援措置
台風19号による災害が激甚被害として指定されたことに伴い、被災した14都県の中小企業者等に対し、下記の2点が実施されます。
① 中小企業信用保険の特例措置
羅災証明を受けた中小企業者が事業再建資金を借り入れる際、一般保証とは別枠で信用保証を利用できます。(借入額の100%を保証)
② 災害復旧貸付の金利引下げ
日本公庫が実施している災害復旧貸付について、融資額のうち1千万円を上限に3年間、金利が0.9%引下げられます。
雇用調整助成金についても助成率の引上げ(中小企業は4/5)や、支給限度日数を300日に引上げるなどの追加措置が実施されます。
★☆★11月のチェックポイント★☆★
※年末調整の準備
各種控除申告書などを社員に配布し、控除を受けるために必要な証明書などの提出を促します。
中途入社の方には、前勤務先の「源泉徴収票」を取り寄せるよう依頼。
※年末商戦費用・賞与などを加える資金計画を確認
必要資金確保のため得意先管理を徹底し、売掛金回収に努めます。
借入が必要な場合には、早めに金融機関に提出する書類の準備をします。
※人材確保の早めの募集
人材不足の高まりから、パート・アルバイトを確実に確保するために早めの募集を行います。
「下請法」と「消費税転嫁対策特措法」
毎年11月は「下請取引適正化推進月間」として、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の普及・啓発が集中的に行われます(今年度の標語は「無茶な依頼しない させない 受け入れない」)。
また、消費税引き上げ後の転嫁拒否行為について、中小事業者に対する悉皆的な書面調査も今後実施されます。
♦下請法による親事業者の義務と禁止行為
下請法は、物品の製造や修理、情報成果物作成、役務提供の委託取引が対象となり、取引内容に応じて規定されている資本金区分に該当する場合に適用されます。
対象取引の親事業者に対しては、発注時の書面交付など4項目の義務と、受領拒否(発注した物品等の受領を拒む)や、支払遅延(支払期日までに代金を支払わない)、減額(あらかじめ定めた金額を減額する)、買いたたき(通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定める)など11項目の禁止事項が定められています。
♦消費税の転嫁拒否行為を禁止する措置
今月から消費税率が10%に引き上げられましたが、消費税転嫁対策特措法では、大規模小売事業者(売上100億円以上など)と継続して取引している事業者や、法人と継続して取引している資本金3億円以下の事業者や個人事業者等に対して、減額や買いたたき、本体価格での交渉の拒否などにより消費税の転嫁を拒む行為を禁止しています。
特に、税込価格で対価を定めている場合に消費税率引き上げ後も対価を据え置く行為や、販売する商品が軽減税率の対象品目であることを理由に10%が適用される商品の仕入価格を据え置く行為は「買いたたき」に該当しますので、注意しましょう。