毎年コツコツ節税対策(2)―暦年贈与による相続税の節税効果―
カテゴリー: 相続税の基礎
2014-10-30
暦年贈与による相続税の節税効果
贈与による財産移転を行った場合の節税効果を数字を使った具体例で説明します。前提として節税対策前の相続財産が2億円あるものとします。相続人は子供2人だけです。
そうすると、相続税額は概算で3,340万円(下記相続税速算表参照)になります。
それでは、暦年贈与による節税対策を行った場合、どのくらいの節税効果が生まれるのでしょうか。
次の2つのパターンを考えてみたいと思います。
☆パターン1 2人の子供に120万円ずつ5年間贈与した場合 贈与財産 1,200万円 相続財産 1億8,800万円 贈与税額 10万円 相続税額 2,980万円 合計額 2,990万円 ∴節税効果 3,340万円-2,990万円⇒350万円 |
☆パターン2 2人の子供に310万円ずつ5年間贈与した場合 贈与財産 3,100万円 相続財産 1億6,900万円 贈与税額 200万円 相続税額 2,410万円 合計額 2,610万円 ∴節税効果 3,340万円-2,610万円⇒730万円 |
パターン1は2人の子供に120万円ずつ5年間贈与を続けた場合を想定しています。この5年間で支払う贈与税の総額はわずか10万円(下記贈与税速算表参照)です。10万円の税負担で1,200万円の相続財産が減らせたわけです。そうすると、節税対策前には2億円あった財産が1億8,800万円に減少します。1億8,800万円に対する相続税額は2,980万円(下記相続税速算表参照)ですから、贈与税と合わせても2,990万円です。節税対策前の相続税額3,340万円と比較すると350万円の節税効果があったことになります。
パターン2ではさらに節税効果がアップします。この事例では、2人の子供に310万円ずつ5年間贈与を続ける場合を想定しています。5年間で支払う贈与税の総額は200万円(下記贈与税速算表参照)ですからパターン1よりもはるかに贈与税の負担額が大きくなりますが、その分、相続財産が大幅に減少していることがポイントです。節税対策前には2億円あった財産が3,100万円も減少し、相続財産は1億6,900万円になっています。1億6,900万円に対する相続税額は2,410万円(下記相続税速算表参照)ですから、贈与税と合わせると2,610万円になります。節税対策前の相続税額3,340万円からは730万円も税負担額が減少することになります。
このように、生前に財産を移転しておくことで負担する税額が大きく変わります。
早いうちから相続税対策を開始し、長生きして少しずつコツコツ財産移転していくことが大きな節税効果を生むことになるのです。
相続税速算表(税額の計算式=A×B-C)
A)各人の課税価格 | 計算要素 | ||
---|---|---|---|
超 | 以下 | B)税率 | C)控除 |
1,000万円以下 | 10% | 0円 | |
1,000万円 | 3,000万円 | 15% | 50万円 |
3,000万円 | 5,000万円 | 20% | 200万円 |
5,000万円 | 1億円 | 30% | 700万円 |
1億円 | 2億円 | 40% | 1,700万円 |
2億円 | 3億円 | 45% | 2,700万円 |
3億円 | 6億円 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
各相続人の相続税額は、(各人の課税価格)×(税率)-(控除額)で求めます。(各人の課税価格)は相続財産から基礎控除額を差し引いて求めた金額を各相続人に民法の相続分で振り分けた金額です。その金額を速算表に当てはめて各人の相続税額を算出し、最後に全員分の相続税額を合計して相続税の総額を計算します。では、実際に次の手順で計算してみたいと思います。
①基礎控除額を求めます
3,000万円+600万円×2人(相続人の数)=4,200万円
②相続財産から基礎控除額を差し引きます
2億円-4,200万円=1億5,800万円
③各相続人(1人分)の取得金額を計算します
1億5,800万円×1/2=7,900万円
④上記速算表に当てはめます
7,900万円×30%-700万円=1,670万円
⑤2人分の合計額を求めます
1,670万円×2人分=3,340万円
◇計算例<相続財産が1億8,800万円、相続人が子供2人の場合>
計算方法は相続財産が2億円の場合と同じです。
①基礎控除額 4,200万円
②1億8,800万円-4,200万円=1億4,600万円
③1億4,600万円×1/2=7,300万円
④7,300万円×30%-700万円=1,490万円
⑤1,490万円×2人分=2,980万円
◇計算例<相続財産が1億6,900万円、相続人が子供2人の場合>
計算方法は相続財産が2億円の場合と同じです。
①基礎控除額 4,200万円
②1億6,900万円-4,200万円=1億2,700万円
③1億2,700万円×1/2=6,350万円
④6,350万円×30%-700万円=1,205万円
⑤1,205万円×2人分=2,410万円
贈与税速算表(税額の計算式=A×B-C)
A)贈与財産-110万円 | 一般 | 20歳以上の子や孫への贈与 | |||
---|---|---|---|---|---|
超 | 以下 | B)税率 | C)控除 | B)税率 | C)控除 |
200万円以下 | 10% | 0円 | 10% | 0円 | |
200万円 | 300万円 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300万円 | 400万円 | 20% | 25万円 | ||
400万円 | 600万円 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
600万円 | 1,000万円 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1,000万円 | 1,500万円 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
1,500万円 | 3,000万円 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
3,000万円 | 4,500万円 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
◇計算例<120万円の贈与があった場合>
①贈与財産から基礎控除額を差し引きます
120万円-110万円=10万円
②上記速算表に当てはめます
10万円×10%-0円=1万円(1人当たり1年分)
(参考)5年間の贈与税の総額は次のとおりです
1万円×2人分×5年分=10万円
◇計算例<310万円の贈与があった場合>
計算方法は120万円の贈与と同じです。
①310万円-110万円=200万円
②200万円×10%-0円=20万円(1人当たり1年分)
(参考)5年間の贈与税の総額
20万円×2人分×5年分=200万円
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