介護と会計・税務③(経費の按分方法・基準)

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2014-11-20

1回目の解説で介護事業者の会計では、会計区分をしなければならいという解説をしました。区分を分けるということは、共通で発生する費用を分けなければなりません。今回その費用の按分について解説いたします。

按分基準
■個別経費と共通経費
経費には、個別経費と共通経費があります。個別経費は、例えば訪問介護だけをおこなっているヘルパー給料です。1つの居宅サービスに直接関係する経費です。
一方で、共通経費は複数の部署の管理者の給料や総務・経理部門の人件費など1つの居宅サービスに直接関係づけられない経費です。
この共通費は各部門に振り分ける必要があります。

■按分方法
按分(あんぶん)方法については老 振 発 第 1 8 号で通知されていますので、それを参考にします。具体的には以下の表です。
項目
勘定科目
按分方法
給与関連
・介護職員・医師・看護婦給与等常勤職員給与
・介護職員・医師・看護婦給与等の非常勤職員給与
・退職給与引当金繰入
・法定福利費
勤務時間割合により区分(困難な場合は次の方法により按分)
・職種別人員配置割合
・看護・介護職員人員配置割合
・届出人員割合
・延利用者数割合
材料費関連
・介護用品費
・医薬品費
・施設療養材料費
・施設療養消耗器具備品費
・診療材料費
・医療消耗器具備品費
各事業の消費金額に より区 分。(困難な場合は次の方法によ り按分)
・延利用者数割合
・各事業別収入割合
給食用材料費
実際食数割合により区分。(困難な場合は次の方法によ り按分)
・延利用者数割合
・各事業別収入割合
その他の材料費
延利用者数割合により按分(困難な場合は各事業別の収 入割合により按分)
経費
・福利厚生費
・職員被服費
給与費割合により区分。(困難な場合は延利用者数割 合により按分)
・旅費交通費
・通信費(通信運搬費)
・交際費
・諸会費
・雑費
・渉外費
給与費割合により区分。(困難な場合は延利用者数割 合により按分)
・延利用者割合
・職種別人員配置割合
・給与割合
・消耗品費
・消耗器具備品費
・保健衛生費
・被服費
・教養娯楽費
・日用品費
・広報費
各事業の消費金額により区 分。 (困難な場合は延利用者数割 合により按分)
車両費
(困難な場合は次の方法によ り按分)
・送迎利用者数割合
・延利用者数割合
会議費
会議内容により事業個別費として区分。(困難な場合は延利用者数割合により按分)
光熱水費
メーター等による測定割合により区分。(困難な場合は建物床面積割合により按分)
修繕費(修繕維持費)
建物修繕は、当該修繕部分により区分、建物修繕以外は事業個別費として按分(困難な場合は、建物床面積割合で按分)
・賃借料
・地代家賃等
賃貸物件特にリース物件については、その物件の使用割合により区分。(困難な場合は、建物床面積割合により按分)
保険料
・建物床面積割合により按分
・自動車関係は送迎利用者数割合又は使用高割合で、損害保険料等は延利用者数割合により按分
租税公課
・建物床面積割合により按分
・自動車関係は送迎利用者数割合又は使用高割合で按分
保守料
保守契約対象物件の設置場所等に基づき事業個別費として区分。(困難な場合は延利用者数割合により按分)
委託費
委託費(寝具)(給食) (その他)
各事業の消費金額により区分。(困難な場合は延利用者数割合により按分)
・延利用者数割合
・実際食数割合
・建物床面積割合
・延利用者数割合
研修費
・謝金
・図書費
・旅費交通費
・研修雑費
・研究材料費
研修内容等、目的、出席者等の実態に応じて、事業個別費として区分。(困難な場合は、延利用者数割合により按分)
減価償却費
・建物減価償却費
・建物附属設備減価償却費
・構築物減価償却費
建物床面積割合により区分。(困難な場合は、延利用者数割合により按分)
医療用器械備品減価償却費
使用高割合により区分。(困難な場合は、延利用者数割合により按分)
車両船舶減価償却費
使用高割合により区分。(困難な場合は、延利用者数割合により按分)
その他の器械備品減価償却費
使用高割合により区分。(困難な場合は、延利用者数割合により按分)
・その他の有形固定資産減価償却費
・無形固定資産減価償却費
延利用者数割合により按分
徴収不能額
徴収不能額
各事業の個別発生金額により区分。(困難な場合は各事業別収入割合により按分)
引当金繰入額
・退職給与引当金繰入
・賞与引当金繰入
給与費割合により区分(困難な場合は延利用者数割合により按分)
徴収不能引当金繰入
事業毎の債権金額に引当率を乗じた金額に基づき区分。(困難な場合は、延利用者数割合により按分)
支払利息
支払利息
事業借入目的の借入金に対する期末残高割合により区分。(困難な場合は、次の方法により按分)
・借入金が主として土地建物の取得の場合は建物床面積割合
・それ以外は、延利用者数割合

会計区分を行った際に整理した科目が、上記にない場合は類似の科目の考え方を基に按分します。また、会計区分を行った際に、どのような按分方法を用いて区分したか分かるように記録しておくことが必要です。


執筆者: 満田 将太 資格:税理士・公認会計士
得意分野:起業支援・財務分析
連絡先:mitsuda@en-count.com

監査法人で会計監査に従事し、様々な業種(代理店業・製造業・商社・百貨店等)の経営を見てきました。また自身でも高齢者住宅の紹介業で起業していますので、そのような経験を活かして独立・起業のアドバイスなどが出来ればと思います。
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